WebGL との向き合い方について考えた2014年を振り返ってみる
本日、と言うかすでに日付は変わってしまったんですが、2014年12月16日、無事に年内の WebGL スクールのカリキュラムが終了しました。
正直なところ、WebGL スクールが始まった11月以降、私は公休をほぼスクールの開催に向けての準備やスクールの授業に使ってきたので、休みが実質全然無いような状況でした。こうして無事にスクールの年内の講義が終わったことは、気持ちの上でも体力的な意味でも大変喜ばしいことだなと思っているところです。
思い返せば2014年のはじめ。
私は地道に更新を続けてきていた wgld.org というサイトの運営だけでは、今後の WebGL の普及活動としては不十分なのではないかと考え始めていました。それを契機に、WebGL 関連のイベントをオンラインで企画してみたり、開発者フォーラムを立ち上げてみたり、あるいは勉強会などを開いたり登壇者として積極的に他所へ出向いてみたりと、活動の幅を広げるように心がけてきました。
さすがに、初めて企画して WebGL 製の作品の投稿を募ったバレンタインデー企画のイベントでは、多くの作品は集まりませんでした。世の注目を集めたわけでもありませんでしたし、正直なところ有意義なイベントとはけして言えなかったと思います。
しかしそこで得られたものには個人的にはすごく大きな意味があったと今でも思っていて、いわゆる本物の現場でエンジニアリングに携わっている方々と、あまりにも普通にコラボレーションできるのだという事実が、私にとってはすごく新鮮であり、また、感動的であり、刺激的でした。
今年のはじめくらいの頃は、WebGL というキーワードが徐々に認知され始めてはいましたが今現在と比べるとまだまだ注目度も低かったですし、どちらかというと一部のコアな人たちの高度な遊びという感じでした。いや、少なくとも私はそんなふうに思っていたような気がします。
しかし、国内でほとんど初めてと言っていい本格的な WebGL を主題としたイベントである WebGL Meetup が開催され、そこに私自身登壇することになったわけですが、ここでの反響は個人的な予測をはるかに超える大きなものでした。
なんとなく、みんな気になってはいたんだなあとただ単純に感じました。
そして思いのほか、私という存在、つまり doxas というハンドルネームで活動する人物のネームバリューは以外にも大きいのだなということを実感しました。なんだか自分で言うと恥ずかしいですが……
※たまに質問されるんですけど、このサムネ画像は自筆のキャラクターなので特に何かのアニメのキャラとかじゃないです(笑)
年末が徐々に近づき、iphone が WebGL に対応したことを皮切りに状況は一変しましたね。一気に WebGL の名を目にする機会が増えました。
Unity も WebGL 出力に対応を表明、あの Adobe 社の製品も WebGL 出力をサポートしたりしましたね。
この頃から、今までは遠巻きに WebGL を眺めていた層、これにはいろいろなタイプの人がいると思いますが、本当にいろんな分野やスキルの人たちが少しずつ WebGL に触れるようになってきたように思います。
いわゆる一級品のフロントエンドエンジニアから、3D 未経験だけどゲームなどを作成することに興味がある趣味グラマ、あるいはまだ実用には絶えないと考えていたのではないかと思われる本物の CG 屋さんなどなど……とにかく多彩な顔ぶれ方々の発言のなかに、ちらほらと WebGL というキーワードが混ざるようになってきました。
個人的に興味深かったのは、WebGL に興味を持ってくれた人たちでさえ、実際に WebGL で実装されたものに対する知見が驚くほど少なかったことです。
いろんな場面で、こんなコンテンツもあるんですよ〜 という感じでお見せすると、大抵、反応がすごくいいんですね。WebGL というキーワードについてなんとなく理解していて、しかもその可能性や中身が気になっている人でさえ、実際の WebGL の利用例についてはほとんど知識がない。こういった現状を感じた私は、もっと WebGL の具体的な実装例やその活用事例の発信が必要だなと感じるようになりました。
※割りと適当に思いつきで作ってしまったロゴ……デザインセンスがほしい……
そうして、WebGL 総本山という新しいサイトを立ち上げる決心をします。
今現在はサイトを作って3ヶ月弱という感じで、まあ、実際のところそんなにたくさんの人が閲覧してくれているわけではないのですが、それでも今のところ毎日更新ができていて、少なからず見てくださっている方もいらっしゃって、私としては大変嬉しく感じています。
総本山では、WebGL に関わるあらゆる情報を発信したいと当初から考えていました。
書評記事もありますし、WebGL に関連する求人情報を掲載したりしたこともありました。先日ついに外部から寄稿をいただくこともできまして、あとはサイト内にバナー広告を出稿してくれるスポンサーが見つかれば万々歳ですね!!! |д゚)チラッ
冗談はさておき、WebGL というキーワードの存在感が増していくのと連動するように、私自身も多くのことを、より誤解のないように正しく発信していかなくてはいけないと感じるようになりました。同時に、今までは一方的に WebGL について言及したり、入門向けのテキストを公開しているだけでよかった WebGL との向き合い方が、少しずつその方向性を変え始めているなあとも思うようになりました。
つまり、遠巻きに眺めるだけの未来の謎技術というステージから、確実に手の届くところにある技術に WebGL が移行していくその過程で、じゃあ「実際のところ実案件として考えていっていい段階なの?」というところに、WebGL の置かれている状況が変わってきたのですね。
実際予見していたことではありましたが、私自身もこの実用に耐えうるのかという観点については、iphone が対応した今現在であっても、明確に、胸を張って、間違いなく太鼓判を押せる状況ですと、一概には言えないと思っています。これにはいろいろな要因がありますが、ひとえに WebGL が持つそのコストの高さがいろんな面でどうしても足を引っ張ります。
学習コストの高さ、扱える人間の少なさに由来する人的コスト、いったんリリースできたとしてもその先の運用や保守に関するコスト、とにかくもうコストと言うコストが掛かりすぎてしまう側面が WebGL にはあると思っています。
でもだからこそという考え方も、できるのです。
3D プログラミングは、その独特な実装方法や難解な数学の知識など、なかなか他の分野では扱わないような知識やスキルが求められる部分が多くあります。(3Dに限ったことではないかもしれないですけども)
それ故に、今までもまた今現在でも、コンシューマの開発やゲームエンジンの開発、あるいは高度な CG 作成などの分野にそれらのスキルを持つ人達が自然と流れていっていたと個人的には思っています。しかし WebGL はそういったスキルを身に付ける、あるいは気軽にスキルを磨いていくフィールドとしてはこの上なく敷居の低いものだと思います。
コンパイラは不要、さらに自力でコードを書いて公開するだけならスマートフォンアプリとは違ってライセンスや規約に無駄に縛られることもありません。技術を磨くための参考となる情報がインターネットや書籍から得られるのならば、これほど簡単に 3D プログラミングを始めることができる環境は他にはまだないでしょう。
それならば、今までは「ガチ 3D は無理だ」と諦めてしまっていた層の人たち、あるいは「ガチ 3D で食っていくしかない」と選択肢を狭めるしかなかった層の人たち、そのいずれにとっても WebGL は大きな光明となる可能性があると私は思うわけです。
まったく違う分野で研鑽していたベクトルのまったく異なるエンジニアたちをつなぐ架け橋となり、今までなら考えられなかったような相乗効果やイノベーションを生み出す、そんな可能性が WebGL にはあるのではないかと思うわけです。
※シェーダだけで描かれたシーン。GLSL、面白いです。
とは言え、今の状況はけして諸手を上げて喜べる状況ではなく、むしろどちらかというと厳しい側面もあると感じているのが正直なところ。一部のマニアックな人達向けの、ある意味娯楽的な存在としてしか WebGL が認知されない未来は十分に考えられます。
私はこれをなんとか阻止したいと本気で思っています。
より気軽に、より多くの人に、この素晴らしい WebGL の可能性に触れてもらいたい。
これが本当の本当に、心の底から一番願っていることなのです。
ですから、来年にかけてはもっともっと啓蒙活動を行っていきたいと思っていますし、同時に自分自身がより具体的な活用事例を創作したり、実案件に携わる経験を積んだりする必要があると感じています。
幸いなことに、今年一年を振り返ってみると、積極的に外部に発信したり足を運んだりしてきたことによって、非常に貴重な多くの方々との繋がりや面識を持つことができました。私一人では到底実現できないことや、到底思いつくことができなかったことが、目の前にはたくさんの可能性として広がっています。
やってみたいこと。
やらなくてはと感じること。
たくさんたくさんあります。
なんとか、また来年も WebGL が日本でより素晴らしいものとして認識されるように、私は私のできることをがんばっていきたい。
声がかかれば学校のようなところ、特に中学校や高校といったところに出向いて講義をするのもいいと思っています。(事実、今開催中の WebGL スクールにはなんと中学生の受講者さんもいらっしゃいます!)
3D 界隈の未来は明るいんだぜ! と次の世代を担うみんなに向けて胸を張って言いたいのです。
書籍や Kindle 本だって積極的に出版していきたい。WebGL がマニアックな娯楽になってしまうその前に、より多くの人の手元に WebGL の可能性を届けたいのです。
WebGL をガッツリ使った Web サイトの製作にもできることなら関わってみたい。WebGL を用いたスマートフォンアプリ的なプロジェクトにも同じようなことが言えます。より具体的なビジネスチャンスの一つとして、WebGL の存在感をもっと示す一助となりたいのです。
願わくば、私は WebGL エンジニアとしてフリーランスになりたい。それが来年の目標です。休みや勤務時間が不規則な今のプライベート環境だと、どうしてもフットワークが悪くなってしまう。まだまだ WebGL が枯れていない段階のうちに、どうにか自分自身がもっと身軽に動けるようになりたい。そうでなければできない活動や成果というものがあるような気がするからです。
夢を大きく持つのは自由。
しかし無謀に突っ走りたいわけではありません。現実的に、まじめに、WebGL とこれからも向き合っていきたい。これからも、引き続きがんばりたい所存です。
まずは、WebGL 総本山に誰か広告出稿してください。もしくは WebGL のお仕事ください(笑)